社労士/社会保険労務士 独学 勉強法、学習法、テキスト、基本書

平成25年版 厚生労働白書の抜粋

平成26年社会保険労務士試験受験用
平成25年版 厚生労働白書の抜粋
第一部 若者の意識を探る
第2章 多様化するライフコース
第4節 仕事に関する意識
1、仕事と若者
(1)新規学卒者の就職環境
依然として厳しい新規学卒者の就職環境
若年者人口は減少する一方、高学歴化が進んでおり、新規学卒就職者は、1966(昭和41)年の160万人超から、2012(平成24)年には約66万人にまで減少している。また、近年は、新規学卒就職者の過半数を大卒者が占めている。
新卒者の求人倍率をみると、大卒、高卒とも、バブル景気の頃には3倍前後あったものが、その後低下し、2000年代前半の景気の回復に伴う上昇と、2008(平成20)年秋のリーマンショックの影響による低下を経て、2014(平成26)年3月の大学卒業予定者に対する求人倍率は1.28倍、2013(平成25)年3月の高卒者に対する求人倍率は1.37倍と、依然として低い水準となっており、若者を取り巻く雇用情勢は厳しい。
しかしながら、学校とハローワークの連携が進められるなど、各種支援策の効果から、就職内定率を見ると、大卒については、2011(平成23)年卒の過去最低の水準から、2012年卒は93.6%、2013年卒は93.9%と改善しており、高卒についても、2013年卒は3年連続で改善して97.6%となり、過去20年間で最も高くなっている。
卒業後3年以内の既卒者を新卒者として取り扱う方針
新卒一括採用は、通常、企業が4月に新卒者を採用し、企業内部で育成していく慣行であり、多くの企業により採られている。これにより、新卒者の労働市場が成立していることから、実務に直結したスキルを持たない新卒者であっても、学校卒業後、失業を経ることなく就職することが可能であるというメリットにつながっている。
また、日本の若者の完全失業率が国際的には相対的に低い水準にとどまっている一因とも考えられる。
一方で、新卒一括採用の慣行には、何らかの理由により新卒時に就職できなかった者は、一般の労働市場で実務経験のある者との競争を強いられることになり、正社員就職が困難になるという問題がある。また、新卒者の就職は、景気の影響を大きく受けることから、新卒時の景気が厳しかった世代が職業生涯全体において不利になるという問題につながる。このため、2010(平成22)年には、極端な新卒一括採用とならないよう、雇用対策法に基づく「青少年雇用機会確保指針」を改正し、事業主が取り組むべき措置として、学校等を卒業後少なくとも3年間は新卒者として応募できるようにすることが盛り込まれ、2012年には、6割を超える企業が新規学卒者採用枠で既卒者を募集し、応募可能な卒業後の経過期間も拡大している。
依然として高い早期の離職率
新規学卒就職者の就職後3年以内の離職率をみると、高卒、大卒ともに、バブル崩壊後に上昇し、2004(平成16)年3月卒以降は低下傾向にあるが、2009年3月の高校卒で35.7%、大学卒で28.8%と、依然として高い水準にある。
インターネットからの情報を中心に行われる就職活動
近年、インターネットは、国民生活にとって重要な情報源となっているが、就職活動にも大きな影響を与えている。新入社員が就職活動において利用した情報源の推移をみると、インターネットの企業ホームページや就職関連サイト、会社説明会や採用案内パンフレットを利用したとする者の割合は増加傾向にあり、その水準も8割〜9割と高くなっている。一方、「学校への求人票」を利用したとする者の割合は、2011年度以降上昇しているものの、約6割にとどまっている。近年の就職活動は、一般に、インターネットを通じて企業へ登録(エントリー)することから始められており、学生は、インターネットから得られる情報や企業が発出する一次情報を基に就職先を決めている状況がうかがわれる。
(2)若者の意識〜楽しい生活のために働き、長期雇用の下でのキャリア形成を志向〜
新入社員の働く目的は、経済的豊かさよりも、楽しい生活を重視
新入社員の働く目的の推移をみると、2000(平成12)年以降、「楽しい生活をしたい」とする者の割合が大きく上昇して2012(平成24)年度には最も高い割合となり、逆に「経済的に豊かな生活を送りたい」とする者の割合は低下傾向にあり、働くことに関する最近の若者の意識は、経済的な側面よりも、自分自身が「楽しく」生活できるかどうかという点を重視していることが分かる。
また、「自分の能力をためす生き方をしたい」とする者の割合は、調査を開始した1970年代には最も高い割合を占めていたが、長期的に低下傾向を示す一方、「社会のために役立ちたい」とする若者の割合は、2000年以降上昇傾向にあり、仕事を通じ社会に貢献していきたいと考える若者の増加として注目される。
会社の選択では、能力・個性の発揮や仕事の面白さを求める傾向
次に、新入社員の会社の選択理由についての推移をみると、「会社の将来性を考えて」とする者の割合は、長期的に低下傾向を示す一方、「自分の能力・個性が生かせるから」とする者の割合は上昇傾向で推移し、2012年度には、最も高い割合を占めている。
また、「仕事がおもしろいから」とする者の割合は、1990年代以降、上昇傾向で推移し、2012年度には2番目に高い割合を占めている。先にみた働く目的のうち「自分の能力をためす生き方をしたい」が低下傾向を示していることについては、仕事を通じ何かに挑戦するという考え方が過去に比べ低下しているということであれば、長期的な職業能力の形成が懸念される。しかしながら、これは、他の選択肢の増加に伴い相対的に低下しているものと考えられ、会社の選択理由としては、「自分の能力・個性が生かせるから」とする者の割合が最も高くなっており、若者は、仕事をしていく上で、能力形成をしていけるかどうかという点を重視しているものと考えられる。
長期雇用の下でのキャリア形成を志向
(独)労働政策研究・研修機構「勤労生活に関する調査」結果(1999年、2011年)によると、望ましいキャリア形成に関する若者の意識は、1999(平成11)年から2011(平成23)年にかけ、20歳代において、「一企業キャリア」(一つの企業に長く勤めるキャリア形成)を望ましいとする者の割合が上昇する一方、「複数企業キャリア」(複数の企業を経験するキャリア形成)を望ましいとする者の割合は低下している。
また、新入社員を対象としたアンケート調査においても、2008(平成20)年度以降、「同じ会社で働きたい」とする者の割合の方が、「自分に向かないと思えばすぐに転職したい」とする者の割合より高くなっている。このように、厳しい雇用情勢が続く中、一つの企業に長く勤めキャリアを形成していくことを望む若者が増加している。

 

第2部  現下の政策課題への対応
第1章 子どもを産み育てやすい環境づくり
第8節 児童手当制度
児童手当制度については、「児童手当法の一部を改正する法律」(平成24年法律第24号)が、衆議院における一部修正が行われた上、2012(平成24)年3月に成立し、同年4月1日から新しい児童手当制度が施行された。
これにより、児童手当は、所得制限額(例:夫婦・児童2人世帯の場合は年収960万円)未満の方に対して、3歳未満と、3歳から小学生の第3子以降については児童1人当たり月額1万5千円、3歳から小学生の第1子・第2子と、中学生については児童1人当たり月額1万円を支給することになった。なお、所得制限額以上の方に対しては、特例給付として児童1人当たり月額5千円を支給することになった(所得制限は同年6月分から適用)。

 

第2章 経済社会の活力向上と地域の活性化に向けた雇用対策の推進

 

第1節 若者・女性・高年齢者・障害者等の就業実現
6 フリーターなどのキャリア形成・正社員転換などの就職支援の強化
フリーターなど、正規雇用化を目指す若者の就職支援のため、全国のハローワークでのきめ細かな職業相談・職業紹介、職業訓練の情報提供・相談などを実施しており、2012(平成24)年度は約30.2万人が就職した。2012年度からは「若者ステップアッププログラム」として、既存の取組みに加え、フリーターへの専門的な就職支援のため、各都道府県にわかもの支援コーナー、わかもの支援窓口を開設したことに加え、大都市圏には支援拠点として「わかものハローワーク」を設置し、支援を強化している。また、地域若者サポートステーションとの連携により、就労意欲のあるニートの支援を行う。
7 ニート等の若者の職業的自立支援の強化
ニートなどの若者の職業的自立を支援するためには、基本的な能力の養成にとどまらず、職業意識の啓発や社会適応支援を含む包括的な支援が必要であり、こうした支援は各人の置かれた状況に応じて個別的に行うことや、一度限りの支援にとどまらず、継続的に行うことが重要である。
このため、厚生労働省では、地方自治体との協働により、地域の若者支援機関からなるネットワークを構築するとともに、その拠点となる「地域若者サポートステーション」(サポステ)を設置し、専門的な相談やネットワークを活用した適切な機関への誘導など、多様な就労支援メニューを提供する「地域若者サポートステーション事業」を2006(平成18)年度から実施している
8 ジョブ・カード制度の推進
(1)ジョブ・カード制度の概要
働くことを希望する全ての者が能力を向上させる機会を持ち、その能力を発揮できる社会づくりが求められている中で、フリーターなどの中には、能力を高めて正社員になりたくてもその能力を高める機会に恵まれないため正社員にもなれないという悪循環に陥り、非正規労働の形態にとどまらざるを得ない状況に置かれている者も少なくない。
このため、フリーターなどの非正規雇用の労働者などの職業能力を向上させることなどを通じて、その雇用の安定化などを図ることを目的としたジョブ・カード制度を2008(平成20)年より実施している。
当該制度の主な趣旨・内容としては、非正規雇用の労働者などのうち職業能力の形成機に恵まれなかった者などに対する@ジョブ・カードを活用した効率的なキャリア・コンサルティングの実施や、A企業における実習と教育訓練機関等における座学とを組み合わせた実践的な職業訓練などの受講機会の提供を行うことにより、その職業能力を高め、社会で活躍する人材としての成長を促すことである。
また、Bキャリア・コンサルティングにおいて明らかにされたキャリアに関する希望や訓練修了後の訓練受講者の職業能力に対する評価が記載されたジョブ・カードの就職活動などにおける応募書類としての活用や、Cジョブ・カードにおいて的確に評価された職業能力の可視化を通じて、求職者と企業との適切なマッチングや職業能力を主な基準とした外部労働市場の形成を促進することも重要な役割である。
当該制度における企業実習と座学を組み合わせた実践的な職業訓練は、企業が訓練生と雇用契約を結んで行われる雇用型訓練と、民間教育訓練機関などへの委託により行われる委託型訓練がある。雇用型訓練では訓練生は訓練実施企業から賃金を得ることができる。
一方、委託型訓練では訓練生が雇用保険を受給できる場合には雇用保険の受給を受け、受給できない場合には職業訓練受講給付金により、訓練を受けることができる。また、公共職業訓練や求職者支援制度における一部の職業訓練においてもジョブ・カードを活用したキャリア・コンサルティングや能力評価が実施されている。
(3)学生用ジョブ・カードの開発
近年、厳しい雇用情勢が続く中で、大学、専門学校(専修学校専門課程)等の卒業者の就職環境も厳しい状況が続いており、その背景の1つとして、大企業を希望する学生と学生を積極的に採用したい中小企業とのミスマッチの存在が指摘されている。
このような現状に対応するため、厚生労働省は、2011(平成23)年度に中小企業の事業主が学生の選考に当たり履歴書のみを用いた選考と比べて学生の人柄や適性、能力等を知る上でより詳しく有益な情報を得ることができる資料となるとともに、在学中の学生のキャリア形成支援にも有効なツールである学生用ジョブ・カードを新たに開発し、2012(平成24)年度より本格的な普及促進を図っている。
第3節 重層的なセーフティネットの構築
1 生活保護受給者などの生活困窮者に対する就労支援の抜本強化
2011(平成23)年度から生活保護受給者、住宅手当受給者等の就労による経済的自立を促進するため、地方自治体とハローワークとの間で協定を締結し、「福祉から就労」支援事業を実施している。本事業では、ハローワークと福祉事務所等の担当者が対象者のニーズや生活状況などに応じて策定した支援プランに基づき、担当者制による職業相談・職業紹介を始め、公共職業訓練やトライアル雇用等の支援メニューを活用して就労支援を行い、2012(平成24)年度における実績は支援対象者約6万人、就職者数は約4万人となっている。
2013(平成25)年度からは、ハローワークと地方自治体が一体となった就労支援の抜本強化を図るため、現行の「福祉から就労」支援事業を発展させ、「生活保護受給者等就労自立促進事業」を創設し、生活保護受給者を含め生活困窮者を広く対象として、地方自治体にハローワークの常設窓口を設置するなどワンストップ型の就労支援体制を全国的に整備し、早期支援の強化、求職活動状況を共有化するなど、生活困窮者の就労による自立を促進することとしている。
2  雇用のセーフティーネットの推進
(1)求職者支援制度の推進
雇用保険を受給できない方々(特定求職者)に対する支援の必要性の高まりを背景とし、新たなセーフティネットとして、求職者支援制度が2011(平成23)年10月から施行された。求職者支援制度では、特定求職者に対して公的職業訓練(求職者支援訓練又は公共職業訓練)の受講機会を提供するとともに、収入、資産など一定の要件を満たす場合に、訓練期間中の生活を支援するための職業訓練受講給付金を支給している。なお、求職者支援訓練には、多くの職種に共通する基本的能力を習得するための「基礎コース」と、特定の職種の職務に必要な実践的能力を一括して習得するための「実践コース」がある。
また、ハローワークが求職者に対してキャリアコンサルティングを実施し、適切な訓練へ誘導するとともに、個々の求職者の状況を踏まえて作成した就職支援計画に基づき、訓練期間中から訓練終了後まで、一貫して就職支援を行う。訓練実施機関においてもジョブ・カードを活用したキャリアコンサルティング等を行うとともに、ハローワークから提供を受けた求人情報や就職面接会の情報を活用する等、ハローワークと連携した就職支援を行っている。
第4章 自立した生活の実現と暮らしの安心確保
第1節 生活保護の適正化及び生活困窮者の自立・就労支援等の推進
1 生活保護制度の概要
生活保護制度は、その利用し得る資産や能力その他あらゆるものを活用してもなお生活に困窮する方に対して、その困窮の程度に応じた必要な保護を行うことにより、健康で文化的な最低限度の生活を保障するとともに、その自立を助長する制度であり、社会保障の最後のセーフティネットと言われている。
保護の種類には、生活扶助、教育扶助、住宅扶助、医療扶助等の8種類があり、それぞれ日常生活を送る上で必要となる食費や住居費、病気の治療費などについて、必要な限度で支給されている。
2 生活保護の現状と課題
生活保護受給者数は1995(平成7)年を底に増加に転じ、2011(平成23)年7月に現行制度下で過去最高となって以来、引き続き増加傾向にあり、2013(平成25)年3月には約216.1 万人となっているなお、2013 年3 月の対前年同月伸び率は2.5%となって、2010(平成22)年1月の12.9%をピークに鈍化しており、世界金融危機直前(2008(平成20)年10月)の対前年同月伸び率を下回っている。増加の要因は、厳しい社会経済情勢の影響を受けて、失業等により生活保護に至る世帯を含む世帯が急増するとともに、就労による経済的自立が容易でない高齢者等が増加していること等によると考えられる。今後、こうした生活保護受給者への就労・自立支援をより一層強化することが必要である。また、不正受給事案に厳正に対応するため、保護費の適正支給のための取組みも重要である。さらに、生活保護受給者の増加に加え、非正規雇用の労働者や年収200万円以下の給与所得者など、生活に困窮するリスクの高い層も増加している状況にあり、生活保護受給に至る前の段階から生活困窮者の就労・自立の促進を図ることが大きな課題となっている。
3生活保護制度の見直しと新たな困窮者対策の構築
(3)生活扶助基準の見直し
生活扶助基準については、5年に1度実施される全国消費実態調査の特別集計データ等を用いて、専門的な検証を実施するため、社会保障審議会の下に生活保護基準部会を設置し、2013(平成25)年1月に、検証結果を踏まえた報告書がとりまとめられた。今回の生活扶助基準の見直しでは、生活保護基準部会の検証結果に基づき、年齢・世帯人員・地域差といった制度内の「歪み」を調整するとともに、物価の下落分を勘案するという考え方に基づき、必要な適正化を図ることとしている。また、生活保護受給世帯への影響に配慮するため、激変緩和の観点から3年間かけて段階的に見直しを行うとともに、改定幅を10%以内とすることとしている。
第5章 若者も高齢者も安心できる年金制度の確立
第1節 持続可能で安心できる年金制度の運営
1 公的年金制度の改善と着実な運営
公的年金制度は、現役世代の保険料負担により、その時々の高齢世代の年金給付をまかなう世代間扶養の仕組みにより運営されており、賃金や物価の伸びなどに応じてスライドした年金を終身にわたって受けることができるという特長を有している。現在では、国民の約3割(約3,867万人(2011(平成23)年度))が公的年金を受給し、高齢者世帯の収入の7割を公的年金が占めるなど、国民の老後生活の柱としての役割を担っている。
(参考)
年金関連四法
1、年金機能強化法
受給資格期間の短縮               平成27年10月1日施行短時間労働者に厚生年金・健康保険の適用拡大         平成28年10月1日施行厚生年金・健康保険の産休期間中の保険料免除         平成26年4月1日施行遺族基礎年金の父子家庭への支給            平成26年4月1日施行
2、被用者年金制度一元化法               平成27年10月1日施行
厚生年金に公務員も私学教職員も加入することとし2階部分の年金は厚生年金に統一する
3、国民年金法等一部改正法                    平成25年10月1日施行
老齢基礎年金等の年金額の特例水準2.5%の解消
  平成25年10月から▲1%、平成26年4月から▲1%、平成27年4月から▲0.5%
4、年金生活者支援給付金法               平成27年10月1日施行       老齢年金生活者支援給付金等
(2)残された課題への対応
2012(平成24)年度に行った年金関連四法の成立により、2004(平成16)年の制度改正で導入された、上限を固定した上での保険料の引上げ、基礎年金国庫負担割合の2分の1の恒久化、積立金の活用、マクロ経済スライドによる給付水準の調整からなる財政フレームワークが完成し、長期的な給付と負担の均衡を確保して持続的な制度運営を行う基礎が整ったといえる。一方、社会保障・税一体改革の議論の中で、引き続き検討することとされた課題などについては、長期的な持続可能性をより強固にすることと、社会経済状況の変化に対応したセーフティネット機能を強化するという観点からの検討が必要である。
(3)年金積立金の管理・運用
年金積立金の管理・運用の考え方
年金積立金は、厚生労働大臣が年金積立金管理運用独立行政法人(以下「管理運用法人」という。)に寄託することにより管理・運用されている。
実際の市場での運用は、管理運用法人から民間の運用受託機関(信託銀行や投資顧問会社)に委託して行っており、管理運用法人は、その運用受託機関の選定、運用状況などについての評価、その結果に基づく解約などの、運用受託機関の管理を行っている。
直近の運用状況について
年金積立金の運用状況については、長期的な観点から見ることが必要であるが、透明性を確保する観点から、四半期ごとに公表を行っている。直近では、2012(平成24)年度の運用状況が公表されており、通期で収益率は約10.2%、収益額は約11.2兆円の黒字となっている。なお、厚生労働大臣が自主運用を開始した2001(平成13)年度から2011(平成23)年度までの累積の収益率は名目賃金上昇率を平均で約2.2%上回っており、年金財政上の前提を上回っている。
2、企業年金制度の動向
(1)厚生年金基金を巡る課題
2012(平成24)年2月末に発覚したAIJ投資顧問株式会社による年金資産の消失事件によって企業年金の資産運用や財政・制度をめぐる様々な課題が顕在化した。
「厚生年金基金制度に関する専門委員会」においては、@「代行割れ問題」への対応、A代行制度の在り方、B持続可能な企業年金の在り方の各論点に沿って、関係団体等からのヒアリングを含め、7回にわたり議論を行った。
こうした議論を踏まえ、「公的年金制度の健全性及び信頼性の確保のための厚生年金保険法等の一部を改正する法律案」を2013(平成25)年4月12日に国会へ提出、6月19日に成立し、26日に公布された。本改正では、今後基金の新設は認めないこととし、その自主的な解散を促進するため、施行日から5年間の時限措置として、事業所間の連帯債務を外すなどの措置を講ずることにしたほか、施行日から5年後以降に存続する基金については、その積立状況が一定の基準に該当しなくなった場合に、厚生労働大臣が社会保障審議会の意見を聴いて解散を命じることができることとしている。さらに、解散する基金の事業所が他の企業年金制度等に移行し上乗せの給付を続けやすくなるよう支援措置を盛り込んだ。
3、 国際化への対応
海外在留邦人等が日本及び外国の年金制度等に二重に加入することを防止し、また、両国での年金制度の加入期間を通算することを目的として、外国との間で二国間協定である社会保障協定の締結を進めている。2000(平成12)年2月にドイツとの間で協定が発効して以来、2013(平成25)年7月9日までに、欧米先進国を中心に14カ国との間で協定が発効している。また、昨今の我が国と新興国との経済関係の進展に伴い、これら新興国との間でも協定の締結を進めており、ブラジルとの間の協定が2012(平成24)年3月に発効し、同年11月にインドとの間で協定の署名が行われたほか、中国、フィリピン、トルコとの間でも協定の締結に向けた協議等を行っているところである
4、 標準報酬月額等の遡及訂正事案への対応
標準報酬等の不適正な遡及訂正処理の問題については、2008(平成20)年10月から、不適正な遡及訂正処理の可能性がある記録約6.9万件 のうち厚生年金受給者分約2万件を対象に戸別訪問による記録の確認及び調査を実施しており、2009(平成21)年3月までにおおむね終了した。その結果、「従業員」であって、年金記録が「事実と相違」しており、「記録回復の申立ての意思あり」との回答があった事案が1,602件あり、これらの方々については、一定の要件に該当する場合には、年金記録確認第三者委員会に送付することなく、年金事務所段階で年金記録の回復を行うなど、できる限り速やかな対応を図った。
5、年金記録の回復を促進するための取組み
(1)年金記録確認第三者委員会
総務省に設置された年金記録確認第三者委員会は、専門性及び識見の高い法曹関係者、年金実務に精通したもの(社会保険労務士、税理士、市町村住民行政関係者等)、その他の有識者等からなる合議制の機関である。年金事務所(旧社会保険事務所)の確認結果に異議のある方の申立てを受け、申立ての趣旨を十分に汲み取って、様々な関連資料や周辺事情を幅広く収集・検討し、国民の立場に立って、年金記録の訂正に関する公正な判断を行っている。同委員会の判断を踏まえ、総務大臣から厚生労働大臣に対し苦情の「あっせん」が行われると、その判断が尊重されて記録が訂正され、年金額に反映される
(2)年金記録の回復基準の設定
年金記録を速やかに回復するため、一定の要件を満たす場合には、年金記録確認第三者委員会に送付することなく、年金事務所段階で記録回復ができるよう回復基準を設定してきた。これまで国民年金に係る申立てについては、申立内容に対応する確定申告書の控えがある場合等、厚生年金に係る申立については、従業員であった方(事業主や役員でなかった方)の事案であって、給与明細書により給与の実態が確認できる場合等、脱退手当金に係る申立については、支給決定当時発行済みの厚生年金被保険者証に脱退手当金を支給したことを示す表示がない場合などの回復基準を設定した。これにより、これまで約1万9千件が第三者委員会に送付することなく、迅速に記録回復が行われている。
6、年金記録を簡便に確認できるための仕組みの整備
(1)ねんきん定期便の送付
2009(平成21)年4月から、国民年金・厚生年金の全ての現役加入者の方に対し、毎年誕生月に「ねんきん定期便」を送付している。
「ねんきん定期便」では、年金加入期間、年金見込額、保険料納付額の他、最近の月別状況として直近1年間の国民年金の納付状況や厚生年金保険の標準報酬月額等を葉書でお知らせしており、35歳、45歳、59歳といった節目年齢の方には全ての加入記録を封書でお知らせしている。
なお、2013(平成25)年度に59歳になる方には、前年度に58歳を節目年齢として全ての加入記録をお知らせしたことから、平成25年度は葉書でお知らせしている。
(2)ねんきんネットによる記録確認
2011(平成23)年2月から、年金受給者や加入者がご自身の年金記録をインターネットを通じていつでも手軽に確認できる「ねんきんネット」サービスを実施している。このサービスでは、24時間いつでも年金記録を確認できるだけでなく、記録の「もれ」や「誤り」を見つけやすいよう、年金に加入していない期間や標準報酬月額の大きな変動など、確認が必要な記録がわかりやすく表示されている。
また、自宅でパソコンが使えない方には、年金事務所や一部の市区町村及び郵便局の窓口において、「ねんきんネット」の年金記録画面を印刷交付しているほか、コールセンターへ請求していただくことにより郵送するサービスを行っている。
7、第3号被保険者不整合記録問題への対応
サラリーマン(第2号被保険者)の被扶養配偶者である第3号被保険者(専業主婦等)について、第2号被保険者の退職などにより、実態としては第1号被保険者となったにもかかわらず、必要な届出を行わなかったために、年金記録上は第3号被保険者のままとされている記録(不整合記録)を有する方が多数存在する。
この問題に関しては、国会での議論や社会保障審議会の下に設置された「第3号被保険者不整合記録問題対策特別部会」での審議等も踏まえ、第3号被保険者の不整合記録問題に対処するための法案「国民年金法の一部を改正する法律案」を2011(平成23)年11月に国会へ提出したが、2012(平成24)年11月の衆議院の解散に伴い、廃案となった。
その後、この法案の基本的な枠組みを維持した「公的年金制度の健全性及び信頼性の確保のための厚生年金保険法等の一部を改正する法律案」を2013(平成25)年4月12日に国会へ提出、6月19日に成立し、26日に公布された。
本改正では、@年金受給者の生活の安定にも一定の配慮を行った上で、不整合記録に基づく年金額を正しい年金額に訂正、A不整合記録となっていた期間を「学生に対する保険
料納付の特例の期間」(年金額には反映しないが受給資格期間として計算する期間)と同
等のものとして取り扱い、無年金となることを防止、B過去10年以内の期間(60歳以上の者は50歳以上60歳未満であった期間)にある不整合記録となっていた期間の特例追納を可能とし、年金額を回復する機会を提供(3年間の時限措置)等を主な内容としている。
第6章 安定的で持続可能な医療・介護の実現
第3節 安定的で持続可能な医療保険制度の実現
1961(昭和36)年に国民皆保険を達成して以来、社会保険方式の下、全ての国民が職業・地域に応じて健康保険や国民健康保険といった公的医療保険制度に加入することとなっている。そして、病気等の際には、保険証1枚で一定の自己負担により必要な医療サービスを受けることができる制度を採用することにより、誰もが安心して医療を受けることができる医療制度を実現し、世界最長の平均寿命や高い保健医療水準を達成してきた。
一方、国民皆保険達成から半世紀を超え、少子高齢化の進展、非正規雇用の増加など雇用基盤の変化、医療の高度化等、医療を取り巻く環境は大きく変化している。
1 協会けんぽの財政基盤の強化・安定化
健康保険組合の設立が困難である中小・零細企業の労働者とその家族が加入し、加入する事業所の約8割が従業員10人未満である協会けんぽは、被用者保険のセーフティネットとして、我が国の国民皆保険制度を支える重要な基盤となっている。しかしながら、2008(平成20)年10月の協会けんぽ発足直後の経済状況の大幅な悪化等により、協会けんぽの被保険者の平均報酬(年間)は、2008年度385万円だったものが、2011(平成23)年度370万円へと悪化した。それにより、協会けんぽの財政状況は極めて悪化し、その保険料率も2010(平成22)年から2012(平成24)年まで3年連続で引き上げられ、8.2%から10.0%となっており、この間の上昇率は22%に昇る。
こうした状況を踏まえ、2010年度から2012年度までに講じられてきた@協会けんぽの保険給付費等に対する国庫補助率を13%から16.4%に引き上げる、A後期高齢者支援金の3分の1について、財政力に応じた負担(総報酬割)とする措置を、2014(平成26)年度まで2年間継続すること等を内容とする「健康保険法等の一部を改正する法律案」を2013(平成25)年通常国会に提出し、5月24日、可決・成立したところである。これにより、「160万事業所、3500万人」の中小企業の労働者が加入する協会けんぽの保険料率は、前年度と同じ10%を2年間維持できる見込みであり、その加入者の生活の安定や医療の確保に貢献するものとなる。
2 高齢者医療制度について(70〜74歳の患者負担等)
高齢化の進展に伴い増大する医療費を制度横断的に社会全体で支えるため、2008(平成20)年4月に新たな高齢者医療制度が創設された。これは、旧老人保健制度で指摘されていた問題点を解消するため、@高齢世代と現役世代の負担割合を明確化し、A都道府県単位の財政運営とすることで、原則、同じ都道府県で同じ所得であれば同じ保険料とすることなどを狙いとしたものである。
制度施行以降、広域連合や市町村による運営面の努力とともに、75歳以上に着目した診療報酬の廃止等運用面の対応を重ねてきた結果、6年目の現在、制度は概ね定着しつつある。75歳以上の医療費は、2008(平成20)年度約11.4兆円から2013(平成25)年度では約15.0兆円と見込まれており、今後も高齢者の増加等により増大が見込まれる。高齢者が将来にわたり安心して医療を受けられるよう、その医療給付費を世代間・世代内の公平に留意しつつ支えていくため、現役世代からの支援金、高齢者自身の保険料、公費負担の在り方などについて、社会保障制度改革国民会議の議論等を踏まえ検討していく。また、高齢者の患者負担については、加齢に伴い所得水準は低下する一方で、医療費が大幅に高くなることに配慮する必要があり、併せて現役世代との負担の公平を確保していかなければならない。
3 医療費適正化に向けた取組み
2010(平成22)年度の国民医療費は、37.4兆円(1人当たり29.2万円)となっており、医療技術の進歩、高齢化等により、今後も医療費が伸び続けていくことが見込まれる。このような中、国民皆保険を堅持していくため、医療費の伸びの構造的要因に着目し、必要な医療を確保した上で、効率化できる部分は効率化を図ることが重要である。このため、生活習慣病の予防や、患者の状態に応じた適切な医療サービスの実施等効率的な医療の提供を推進していく必要がある。
国と都道府県においては、医療費の伸びを適正化するため、医療費適正化計画(5年計画)を定めている。第一期医療費適正化計画においては、2008(平成20)年度から2012(平成24)年度までの5年間を計画期間として、国民の健康の保持及び医療の効率的な提供を推進するため、生活習慣病対策と平均在院日数の短縮に関する目標を掲げ、取組みを進めてきた。2013(平成25)年度から、第二期医療費適正化計画の計画期間が開始しており、都道府県及び国において第二期医療費適正化計画を策定するとともに、第一期医療費適正化計画の実績に関する評価として、目標の達成状況や施策の実施状況に関する調査及び分析を行うこととしている。
また、2008年度より、生活習慣病予防による医療費適正化を進める観点から、メタボリックシンドロームに着目した特定健診・保健指導を実施している。特定健診・特定保健指導の実施率は、目標値とは開きがあるものの着実に上昇してきており、引き続きこの向上に努めていく。
第4節 地域包括ケアシステムの構築と安心で質の高い介護保険制度
1 地域包括ケアシステムの実現
2000(平成12)年4月に社会全体で高齢者介護を支える仕組みとして創設された介護保険制度は今年で14年目を迎えた。介護サービスの利用者は在宅サービスを中心に着実に増加し、2010(平成22)年には400万人を超えた。介護保険制度は着実に社会に定着してきている。
高齢化がさらに進展し、「団塊の世代」が75歳以上となる2025(平成37)年の日本を考えてみると、およそ5.5人に1人が75歳以上高齢者となり、認知症の高齢者の割合や、世帯主が高齢者の単独世帯・夫婦のみの世帯の割合が増加していくと推計されている。特に、首都圏を始めとする都市部では急速に高齢化が進むと予測される。一方で、自身や家族が介護を必要とする時に受けたい介護の希望を調査したアンケートによれば、自宅での介護を希望する人は70%を超えている。
そこで、このような社会構造の変化やニーズに応えるために「地域包括ケアシステム」の実現を目指している。「地域包括ケアシステム」とは、重度な要介護状態になっても、住み慣れた地域で自分らしい暮らしを人生の最後まで続けることができるよう、おおむね30分以内に必要なサービスが提供される中学校区などの日常生活圏域内において、医療、介護、予防、住まい、生活支援サービスが切れ目なく、有機的かつ一体的に提供される体制のことをいう。
2005(平成17)年に行われた介護保険法の改正により、地域密着型サービス導入や地域包括支援センターの創設など、地域包括ケアシステムの実現に向けてその第一歩を踏み出した。
2012(平成24)年に施行された改正介護保険法と介護報酬改定によって、更に介護サービス提供体制の充実に向けた取組みが図られ、定期巡回・随時対応型訪問介護看護や複合型サービスが創設された。また、平成24年度介護報酬改定においては、地域包括ケアシステムの構築を推進する観点から、在宅サービスの充実と施設の重点化、自立支援型サービスの強化と重点化、医療と介護の機能分担・連携の推進、介護人材の確保とサービスの質の向上のための取組みを行った。平成24年度からは医療・介護等の多職種が協働し、困難事例等の個別事例を検討することを通じて、高齢者の自立支援に資するケアマネジメント支援、地域支援ネットワークの構築、地域課題の把握を目指す地域ケア会議を推進している。
これらの改正・改定による効果や影響を見極めつつ、次期の介護保険制度の改正や介護報酬の改定に向けて議論を深め、市町村が高齢化の進展状況等を踏まえつつ地域の自主性や主体性に基づき、地域の特性に応じて地域包括ケアシステムを作り上げていくことができるよう取り組んでいく必要がある。
一方、サービス利用の大幅な伸びに伴い介護費用が急速に増大することとなる。2011年度の介護費用は8.2兆円だが、高齢化がさらに進展し、団塊の世代が75歳以上となる2025年には、介護費用は約21兆円になることが見込まれる。介護保険制度の持続可能性を確保するために、介護給付の重点化・効率化や負担の在り方についても併せて検討していく必要がある。

 

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