国民年金法の基礎 38の要点にまとめました
§1、目的等
1、 国民年金制度は、日本国憲法第25条第2項に規定する理念に基づき、老齢、障害または
死亡によって国民生活の安定がそこなわれることを国民の共同連帯によって防止し、もって
健全な国民生活の維持及び向上に寄与することを目的とする
2、 公的年金の沿革
昭和36年4月1日・・・国民年金法が全面的に施行、自営業者も対象
国民皆年金の実現
昭和61年4月1日・・・国民年金法を全国民共通の基礎年金とする
*船員保険が厚生年金保険と統合
*被用者の配偶者が任意加入から第3号被保険者として強制加入へ
昭和61年4月1日以降の年金法を「新法」、これより前は「旧法」と呼ぶ
3、 目的・特徴
対象者 全国民
基本理念 国民の共同連帯 福祉的給付もある
年金額の改定 物価・賃金水準の変動に応じて改定
4、 保険者 政府
5、 保険事故と給付
老齢 老齢基礎年金、付加年金
障害 障害基礎年金
死亡 遺族基礎年金、寡婦年金、死亡一時金
他 脱退一時金
§2、被保険者
6、 第1号被保険者 日本国内に住所を有する20歳以上60歳未満の者で第2号被保険者、第
3号被保険者に該当しない者
適用除外 被用者年金各法に基づく老齢給付等の受給権を有するもの
第2号被保険者 被用者年金各法の被保険者、組合員又は加入者
適用除外 65歳以上のものであって、老齢給付等の受給権を有するもの
第3号被保険者 第2号被保険者の配偶者であって主として第2号被保険者の収入により生
計を維持するもの(被扶養配偶者)で20歳以上60歳未満
被扶養者の要件は健康保険法と同じ
7、 被用者年金各法(4つ)
厚生年金保険法・国家公務員共済組合法・地方公務員等共済組合法
私立学校教職員共済法
8、 任意加入被保険者
原則の任意加入被保険者
@国内に住所を有する20歳以上60歳未満で老齢給付等の受給権を有する者(適用除外者)
A日本国内に住所を有する60歳以上65歳未満の者
B日本国籍を有するが国内に住所を有しない20歳以上65歳未満の者(在外邦人)
特例による任意加入被保険者
65歳になっても受給資格期間を満たしていない者は、特例で最長70歳まで任意加入できる
受給権を取得した場合翌日資格喪失
・昭和40年4月1日以前生まれで・老齢給付等の受給権を有しない
@国内に住所を有する65歳以上70歳未満の者
A日本国籍を有するが国内に住所を有しない65歳以上70歳未満の者(在外邦人)
§3、被保険者期間・併給調整
9、 被保険者期間
被保険者期間は保険料納付済期間、保険料免除期間、と保険料納付済期間及び保険料免除期間
以外の期間(いわゆる未納期間)の3つの期間からなる
10、 保険料納付済期間
@第1号被保険者として保険料を全額納付した期間
A第2号被保険者として20歳以上60歳未満の期間
B第3号被保険者としての期間
11、 被保険者期間の計算
月を単位とし資格を取得した日の属する月から喪失した日の属する月の前月までの期間
資格取得日は、取得事由に該当した「当日」、喪失日は原則喪失事由に該当した「翌日」
年齢を理由に喪失する場合は例外的に「当日」となる
特例 @同月得喪の場合:1カ月の期間とする
A*種別変更があった場合:最後の種別の被保険者であった月とみなす
*被保険者の種別:第1号、第2号、第3号いずれの被保険者であるかの区別
12、 併給の調整
原則 1人1年金の原則
例外 @同一の支給理由(2階建て年金) 老齢基礎年金+老齢厚生年金
障害基礎年金+障害厚生年金
遺族基礎年金+遺族厚生年金
A65歳以上 老齢基礎年金+遺族厚生年金
障害基礎年金+老齢厚生年金
障害基礎年金+遺族厚生年金
§4、老齢基礎年金
13、 対象者 原則、大正15年4月2日以後生まれ
(昭和61年4月1日以後に60歳に達する者)
14、 支給要件 @保険料納付済期間又は保険料免除期間(学生納付特例と若年者納付猶予の期間は
含まない)を1カ月以上有すること
A受給資格期間(保険料納付済期間+保険料免除期間+合算対象期間)が25年以
上あること
B65歳に達したこと
15、 合算対象期間 カラ期間(老齢基礎年金の額には反映されない)とも呼ばれている
@国民年金に任意加入できたのにしなかった期間または任意加入したが保険料を納付しなかっ
た期間(20歳以上60歳未満)
(例:サラリーマンの妻の場合、昭和61年3月31日までは任意加入だったので合算対象期
間の可能性有)
A第2号被保険者として20歳前及び60歳以後の期間
16、 受給資格期間の短縮の特例
@昭和5年4月1日以前生まれの者 生年月日により21年〜24年あればよい
(昭和36年4月1日にすでに31歳で60歳まで29年しかない)
A被用者年金加入期間の特例
昭和31年4月1日以前生まれの者は被用者年金加入期間が生年月日により20年〜24年
あればよい
B厚生年金保険の中高齢の特例
昭和26年4月1日以前生まれの者は40歳(女子、坑内員、船員は35歳)以後の厚生年
金保険の被保険者期間が生年月日により15年〜19年あればよい
17、 老齢基礎年金の額
40年間加入で満額(772800円) フルペンション減額方式
保険料免除月数の扱い(平成21年4月以降)
全額免除月 8分の4
3/4免除月 8分の5
半額免除月 8分の6
1/4免除月 8分の7 として月数を計算
保険料免除月数の扱い(平成21年3月以前)
全額免除月 6分の2
3/4免除月 6分の3
半額免除月 6分の4
1/4免除月 6分の5 として月数を計算
18、 振替加算
意味 老齢厚生年金や障害厚生年金に加算される加給年金を一定の割合で65歳に
なった配偶者に支給される老齢基礎年金に振り替えて加算する
支給要件
振替加算対象者の要件・・・大正15年4月2日から昭和41年4月1日までに生まれた
者(新法施行日前にすでに20歳以上で40年の満額満たすのが難しい者)で
65歳到達時に配偶者によって生計を維持していたこと(原則年収850万円未満)
加給年金受給者の要件・・・配偶者加給年金が加算される老齢厚生年金(240カ月以上加
入)、または障害厚生年金(1級又は2級)の受給権者
振替加算の額 平成26年度で222400円〜14900円(若い世代ほど少ない)
19、 支給の繰り上げ
60歳以上65歳未満の間に支給繰り上げの請求ができる
任意加入被保険者はできない
1カ月当たり0.5%減額(60歳に達した月に請求 0.5×12×5=30%減額)
20、 支給の繰り下げ
66歳に達する前に老齢基礎年金の裁定請求をしていなければ支給繰り下げ
の申出が可能1カ月当たり0.7%増額
(70歳に達した月に申出 0.7×12×5=42%増額)
65歳に達した時、障害又は死亡を支給事由とする年金給付の受給権者は繰り下げできない
§5、障害基礎年金
21、 支給要件
初診日要件 被保険者(任意加入被保険者も可)または被保険者であった者で国内住所
かつ60歳以上65歳未満
障害認定日要件 初診日から1年6カ月経過した日(又はそれまでに傷病が治った日)に
障害等級1級か2級に該当
保険料納付要件
初診日の前日において、初診日の属する月の前々月までに被保険者期間
がある場合
@初診日の属する月の前々月までの被保険者期間の内
「保険料納付済期間+保険料免除期間」が3分の2以上
A初診日が平成38年4月1日前にある場合初診日の属する月の前々月
までの被保険者期間の内、直近の1年間に保険料の未納期間がないこと
ただし初診日において65歳以上の者にはこの特例は適用しない
22、 特別ルール
事後重症による障害基礎年金
障害認定日に障害等級に該当しない場合でも、65歳に達する日の前日までに
同一の傷病により、障害等級に該当しかつ請求した場合
基準障害による障害基礎年金
障害等級に該当しない障害の状態の者が別の傷病による障害(基準障害)に
よって、65歳に達する日の前日までの間にこれら複数の障害を併合して初め
て障害等級(1級又は2級)に該当する場合
20歳前の傷病による障害基礎年金(初診日要件と保険料納付要件がない)
福祉的な障害基礎年金
初診日に20歳未満であった者が原則20歳に達した日に障害等級に該当して
いる場合
23、 支給額 1級 966000 2級の額×1.25
2級 772800 老齢基礎年金の満額
子の加算額 *生計を維持している18歳に達する日以後の3月31日までの子
20歳未満で障害等級1,2級の子 (受給権取得日以降でも可)
*生計維持:年収850万円(所得665万5千円)を基準
第1子、第2子 222400
第3子以降 74100
24、 失権 ABはいずれか遅い方
@死亡
A障害等級3級に該当しなくなって65歳に達したとき
B障害等級3級に該当しなくなって3年を経過したとき
25、 支給停止
@労働基準法による障害補償を受けることができるとき(6年間)
A障害等級1,2級に該当しなくなったとき
20歳前の傷病による障害基礎年金の場合(上記2つに加えて)
@労災保険の年金たる給付をうけることができる場合
A刑事施設・労役場等に拘禁収容されているとき
B国内に住所を有しないとき
C受給権者の前年の所得が一定額を超えるとき(8月〜翌年7月)
§6、遺族基礎年金
26、 支給対象 被保険者に生計を維持されていた「子のある配偶者」又は「子」
子の要件 婚姻をしていない18歳年度末又は20歳未満障害1,2級
配偶者の要件 上記の子と生計を同じくすること
27、 死亡したものの要件
@被保険者
A被保険者であった者で日本国内に住所を有しかつ60歳以上65歳未満
B老齢基礎年金の受給権者
C老齢基礎年金の受給資格期間を満たしたもの(25年要件)
@Aは保険料納付要件を満たしている必要あり(障害基礎年金と同じ)
28、 実際の支給 配偶者と子が受給権者の場合 全額配偶者に支給
子のみの場合 子の人数で割った額がそれぞれ支給される
金額 基本額 772800
子の加算額 配偶者と子が受給権者 子のみが受給権者
第1子 222400 (基本額)
第2子 222400 222400
第3子以降 74100 74100
(例)配偶者と子3人 772800+222400+222400+74100=1291700
子3人 772800+222400+74100=1069300
29、 失権 共通 @死亡A婚姻B直系血族、直系姻族以外の養子となった
配偶者 @加算の対象となったすべての子が失権した
A子と生計を同じくしなくなった
子 @18歳年度末あるいは(障害状態にある場合)20歳に達した
A障害等級に該当しなくなった
B離縁によって死亡したものの子でなくなった
30、 支給停止 @労働基準法による遺族補償が行われるとき(6年間)
A受給権者(配偶者又は子)の所在が1年以上明らかではなく他の受給権
者(子)が申請したとき
B(子に対する停止)配偶者が遺族基礎年金の受給権を有する時
C(子に対する停止)生計を同じくするその子の父母があるとき
§7、第1号被保険者の独自給付
31、 付加年金 支給要件:月額400円の付加保険料の納付済期間を1カ月以上有する者
年金額: 200円×付加保険料納付済月数
32、 寡婦年金
死亡した夫の要件
第1号被保険者としての「保険料納付済期間+保険料免除期間」が25年以上で老齢基礎年
金、障害基礎年金の支給を受けずに死亡したこと
第2号、第3号被保険者期間は考慮されない
妻の要件 夫により生計を維持、婚姻関係10年以上、65歳未満
年金額 夫の第一号被保険者としての期間により計算された老齢基礎年金の額×4分の3
60歳以上65歳未満に支給される有期年金
妻が65歳に達した時や繰り上げ支給の老齢基礎年金の受給権を取得
した時寡婦年金の受給権は消滅する
33、 死亡一時金
第1号被保険者としての保険料を36カ月以上納付したものが老齢基礎年金等の給付を受けず
に死亡した場合に支給
(納付済月数+1/4免除月数×3/4+半額免除月数×1/2+3/4免除月数×1/4)
が36カ月以上ある事
遺族の範囲 生計を同じくしていた配偶者、子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹
(順位もこの順)
支給額 最高32万円(420カ月以上)〜最低12万円(36か月〜180カ月未満)
死亡者が付加保険料を3年以上納付の場合は8500円を加算
§8、保険料
34、 保険料 平成25年度 15820円×保険料改定率
平成26年度 16100円×保険料改定率 毎年280円ずつあがり
平成27年度 16380円×保険料改定率 (29年度のみ240円)
平成28年度 16660円×保険料改定率 平成29年度で固定
平成29年度 16900円×保険料改定率
徴収期限 毎月(資格取得月から資格喪失月の前月まで)
納付義務 被保険者本人、ただし世帯主及び配偶者の一方も連帯して納付する義務あり
納期限 翌月末日まで
第2号被保険者と第3号被保険者の保険料は被用者年金制度から基礎年金拠出金を負担
納付しているから国民年金の保険料を納付する必要はない
35、 付加保険料 第1号被保険者(原則による任意加入被保険者を含む)
400円を翌月末日まで
付加保険料を納付できない者
@特例による任意加入被保険者
A保険料の免除者
B国民年金基金の加入者
§9、保険料の免除・追納
36、 保険料の免除 法定免除 障害等級1、2級
生活保護による生活扶助の受給者
申請による免除(単身者の場合)
全額免除 前年度所得57万円以下
3/4免除 前年度所得78万円以下
半額免除 前年度所得118万円以下
1/4免除 前年度所得158万円以下
学生納付特例(学生等)と若年者納付猶予(30歳未満のフリーター等)
全額を免除する制度であるが就職後に追納を期待する制度で
老齢基礎年金の額に一切反映されない
期間は保険料全額免除期間に算入される
所得基準は学生納付特例→半額免除、若年者納付猶予→全額免除 と同じ
37、 保険料の追納 免除された保険料は過去10年分まで追納可能
付加保険料は追納できない
38、 保険料の後納制度
滞納した保険料は過去2年分までしか納付できないが現在特例措置として
(平成24年10月1日から3年間に限り)、過去10年間まで納付可能
以上
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